スコット・ジュレク

先日(1ヶ月も前になってしまう!)、スコット・ジュレクの講演会に行ってきた。たまたまその日の朝、何気にinstagramを見ていたら彼が皇居を走っている写真がアップされていて、その夜に渋谷でトークショーを行うと知ったのだ。すごく運が良かった。

彼を知ったのは、去年走り始めた頃。少し面白くなってきた私は『BORN TO RUN〜走るために生まれた』という本に出会った。この本は「どうして走ると足はいたむのか」という筆者の疑問からメキシコ北部の渓谷に住む走る部族タラウマラとの出会い、そして古代から人間は走り続けてきたという文化人類学的なテーマを織り交ぜながら書かれたニューヨークタイムズのベストセラーにもなったノンフィクションの本で、スコット・ジュレクはその中でアメリカ人ランナーとして紹介されている。この本、読み進めれば進めるほどその世界にのめり込み、距離を走ることにあまり興味を持っていなかった私が、すっかり走ることに嵌ってしまったきっかけになった本だ。人として生まれたからには走らずにはいられない!!そんな人間としての本能に訴えかけてくるこの本に影響された私は、まだ走り始めで脚にしっかりと筋肉がついていなかったのに毎日狂ったように走り続け、脚を腫らせながら、それでも走っていたのを覚えている(苦笑)。「人は年をとるから走るのをやめるのではない、走るのをやめるから年をとるのだ」この言葉はそのときの私に響いた。

その本で紹介されていたスコット・ジュレク、彼は伝説であるウエスタンステーツ・エンデュランスランを7連覇、灼熱のデスヴァレーを走るバッドウォーター・ウルトラマラソンを2度優勝し、今年7月にはアメリカの14州にまたがる3,522キロのアパラチアントレイル(長距離自然歩道)を46日8時間7分で走破し、世界新記録を打ち立てたウルトラマラソン界のレジェンドである。

彼の著書に『EAT&RUN』があり、この本にもとても影響受けた。この本はウルトラマラソン界のレジェンドである彼の半生が書かれたもので、どうして彼は走るようになったのか、なぜ走るのか、走り続けるのかという、人生の道を追い求めている彼の姿が描かれていて、多くの悩みや葛藤を抱えながら、果敢にレースにチャレンジし、それを成し遂げ成長していく姿は読んでいる私たちに希望を与えます。彼はヴィーガン(完全菜食主義者)でもあり、この本を読み始めてから数ヶ月は完全ヴィーガンにしていたこともありました。

***

今回の講演会は今年7月のアパラチアントレイル(長距離自然歩道)での世界新記録を打ち立てたことについてのもの。このアパラチアントレイル、日本の北海道の択捉島の最北から沖縄の与那国島までの距離、3300kmよりも長い。また累積標高差が約150kmもあるという世界一過酷と呼ばれるトレイルだ。

彼は1日80キロ以上走り、平均睡眠時間は4-5時間、最終日は1時間の睡眠で臨んだという。もう余りの数字の羅列に想像がついていかない…それもその状態が46日間‼︎

講演の始めに彼がこのトレイルを走っている非公開ショートフィルムを見せてもらった。その中の彼は、始めは少しふっくらしている印象だったが、トレイルが終盤に近づくにつれ、頬は痩せこけ、身体もどんどん絞られていって、画面からも彼の感覚が日に日に研ぎ澄まされていく様子が感じられた。また、今回はSNSなどで随時状況をレポートしていたため、たくさんのファンが彼と一緒になって走っていた。痩せた彼とその群衆が走るその姿は、なぜだかキリストを連想させた。(宗教的な意味はないけれど、何か神々しさを感じたのだと思う)

(余談だが、何とこのフィルム、あのジェームズ・キャメロン(タイタニックやアバターの監督)が一部同行し撮影したそうで、今後映画になるかもしれないという話!上映されたら是非見てみたい!)

彼の話で興味深かったのは、トレイルが始まって1週間後に膝を負傷し、2日間だけ走るのをやめてトレイルを歩いたら、よくなったという話。『EAT&RUN』か何かのインタヴューの中で「ヴィーガンに変えてから血圧やコレステロール値がとてもよくなった。それに、菜食のおかげで何キロ走っても炎症が起こらなくなって、捻挫したり、怪我したりしても、自然治癒力が高めているので、直ぐ治ります。」というようなことを言っていたけれど、この回復力は想像を絶する。きっと私だったら、数メートルも歩けないにちがいない。恐るべし、スコット。

また私の関心を特に引いたのは、強靭な精神力を持っている彼でさえ、走っている途中で感情のアップダウンがあったということ。「もうやめたい」「どうしてこれをやることにしたんだろう」そんな思考が出てきても、目の前にあることに意識を向け、次のトレイルの入り口まで、サポートの人がいる場所まで…と小さな目標を掲げて走ったそうだ。

大きな目標を立てると、そのあまりの大きさに圧倒されて足も手も出なくなることがある、そんな時は今できること、小さな目標から少しずつ取り掛かること。そんなことをよく言われる。あの彼でさえ、そうやって小さなことをコツコツと積み重ねゴールに向かって偉業を成し遂げた。実際に最後ゴールするまで記録を達成できるかどうかもわからなかったと言っていた。そんな彼の言葉にとても親しみを感じ、同時に勇気をもらった。(実際大きな目標を成し遂げた人というのは、そういった小さなことをきっちりやるかどうかなんだろうな…)

そして最後にこころに残った彼の言葉。

「私たちは自分が思っているより強い」

今までに何度も何度も想像を絶するチャレンジを成し遂げた彼から発されるその言葉。私たち人間の限界を超えていく体験をした彼からの言葉。人間としての私たちの可能性を感じた瞬間だった。

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『BORN TO RUN〜走るために生まれた』クリストファー・マクドゥーガル
『EAT & RUN 100マイルを走る僕の旅』 スコット・ジュレク

スコット・ジュレクのウェブサイト

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